欅(ケヤキ)【ニレ科ケヤキ属】
■学名:Zelkova serrata
■比重:約0.69
■産地:本州全域
■別名:槻(ツキ) ジャパニーズゼルコヴァ
針葉樹の王様がヒノキなら、広葉樹の王様はケヤキとも言われるほど、日本国内の樹木といえばまず名が挙がる銘木中の銘木。
淡く光る黄金色をベースにくっきりと年輪が刻まれ、細部に見入るほど複雑なモザイク状を呈し、古木からは絵画的な杢目が現れることも。
オーク系は「虎斑」、クスノキは「葡萄杢」、トチノキなら「縮み杢」と樹種によっておおかた出やすい杢目の傾向は定まっているのですが、ケヤキはかなり例外的にものすごいバリエーションの杢目の出る可能性を秘めています。
ボタンの花そっくりの「牡丹杢」、波頭に浮いては消える泡沫のような「泡杢」、同心円が重なる「玉杢」を『白星を重ねる』と見立て、欅一枚板を看板にしている相撲部屋もあり……
芸術的価値を超えて、生きざまや祈願を託した一品もあったりと、ケヤキの愛され方はすさまじいものがあります。
なおかつ数々の欅彫りの仏像が現存し、欅の柱や梁を用いた古い寺院———例えば「地獄ほぞ(地獄止め)」という鉄釘を使わない工法でも知られる清水寺の舞台がいまなお現役でピンピンしている通り、悠久の時間を耐える強さも知られています。
しかしそんなケヤキ、実は比類のない「暴れん坊」でもあるのです。
どんな木でも乾燥させるまでに曲がったり反ったりするのですが、ケヤキの板の曲がり方は尋常でないうえ、その曲がる力がものすごい!
なにしろ乾燥が不十分だったケヤキを大黒柱に据えて家を建てたら、柱が反って暴れて家ごと傾いた、という逸話があるほどです。これはおそらく戦後の建築ラッシュのときのことでしょうが、今でも大木の心材を大黒柱に据えると……まれに起こるようです。
そのうえ硬すぎてノミやカンナがすぐ傷むなど、とにかく大工さん泣かせのきかん坊。しかし美しいから愛されます。
芯が強くて不屈、乾きにくく、どの層にも豊かな表情を持っている……ひょっとして日本人がケヤキ好きなのは、どこか自分の理想像を体現している気がするからかもしれません。
樹種の一覧
モアビ / Moabi チェリー / Cherry
ホオノキ / Magnolia 山桜 / Jamasakura
クリ / Marron ウォルナット / Walnut
アッシュ / Ash ウェンジ / Wenge
カリン / Burmese rosewood ビーチ / Beech
ゼブラウッド / Zebra オーク / Oak
ヒノキ / Japanese cypress チーク / Teak
メープル / Maple ケヤキ / Zelkova