ぼた雪、冬の雨、溶けかけた氷に吹雪の模様。
純銅や純錫、真鍮や銀などの金属に北国の形象を映しこむ金工作家さん。
金属の表面を溶かしたり、酸化させたり、
ときにはわざと失敗するような方法を選ぶことで、金属が秘めている風合いや、
まだまだ実現できるはずの不思議なテクスチャーを研究なさっています。
浦中さんがフェイスブックやインスタグラムに挙げる海や雪の写真には、
背筋がぞくっとする、厳しい美しさがあります。
それらを託した幾何学模様と陰影、そして繊細な鎚目との組み合わせ、
色が主張しないことで、枯山水のように静的な侘び寂びのある
『錫色酒器(すずいろしゅき)』と『錫色小皿(すずいろこざら)』と、
真鍮の肌合いが美しい『key hook(キーフック)』の三作品があります。
ガラス工芸の一大中心地、倉敷芸術科学大学出身のガラス作家さん。
一目ではガラスと分からない、別の素材との間を行き来しているような驚きや、
光に当たった色ガラスの気持ちいい変遷を活かした、ファンタジックな作風をお持ちです。
作家という「自力」と、自然界からもたらされる素材という「他力」との間の折衝を研究。
手法としては、ホットワーク(吹きガラス)、コールドワーク(研磨や切子など)と並ぶ
ガラス工法のひとつ、キルンワークを専門とされています。
キルンワークとは、耐火石膏の型と粉末状のガラスを使って、
ガラスと別のガラス、あるいはガラスと別の素材などを焼き固める手法です。
遠目からだとゼリーや砂糖菓子のように見える『hina(ヒナ)』と、
地図記号のもつ不思議な抽象性をモチーフにした『maplate(マップレート)』の二作品。
東京芸術大学大学院で木工芸を修め、家具メーカーで設計を担当、
そして当大学で改めて木工芸術研究に携わっているという、まさに木づくめの作家さん。
専門分野としては、江戸時代の乗り物、とりわけ駕籠(かご、複数人で
肩に担いで運ぶ人力の乗物)の素材や構造を研究なさっています。
色や革と対比することで、木といえば思い浮かぶ「温かみ」や「柔らかさ」、
目で見るときの感触が今までとはすこし違って感じるような、ギャップを活かした作風。
モダンでシンプルなデザインの『muku-hook(ムク・フック)』と
ペーパーホルダー『lined magnet(ラインド・マグネット)』は、
削り出した木に埋め込まれた強力なネオジム磁石が
まるで無垢木が直接壁に吸い付くかのような面白い驚きを与えています。
紙からさまざまな箱を作るプロダクトデザイナーさん。
東京芸術大学大学院、および当大学においてもプロダクトデザインを専攻なさっていました。
幾何学と幾何学を組みあわせた、複雑で巧妙なバランスをもった作品が特徴。
閉じた箱、空きかける箱、空いた箱、空ききった箱をひとつに連ね、
「箱を開ける」という儀式の流れをあらわした、思わずじっと見入ってしまうような作品も。
つい最近に助手の任期を終え、kuraccoの元メンバーとなってしまいましたが、
佐々木さんがデザインした各作品専用の装丁箱はそのまま。
蔵の赤い屋根をモチーフにした、すてきな箱でお届けします。